「授業準備でAIに資料を貼ったけど、児童の情報までAIの勉強に使われないの?」——先生や保護者がAIを使い始めると、多くの人がこの不安にぶつかります。結論から言うと、主要なAIには「自分の会話を学習に使わせない設定」が用意されています。一方で、設定をオフにしたからといって「何を入力しても安全」になるわけではありません。
この記事では、現役の小学校の先生の目線で、ChatGPT・Gemini・Claudeの「学習させない設定」の場所と手順を、各社の公式情報をもとにやさしく整理します。あわせて、設定だけでは守れないこと・学校や家庭で子どもの情報を守るときの注意もまとめました。個人情報を守ることは、AIを教育に取り入れるうえでの大前提です。
📌 はじめに(2026年6月時点)
AIのデータ取り扱いと設定画面は変更が続いています。本記事は各社公式の情報をもとにしていますが、最新の設定名・手順・データ利用方針は必ず各社の公式ヘルプで確認してください。本記事は法的助言ではありません。学校・自治体のルールがある場合は、そちらが最優先です。
そもそも、AIに入力した会話はどう扱われるの?
多くのAIサービスでは、ユーザーの会話が「AIモデルをより賢くするための学習材料」として使われることがあります。ただし扱いはサービスやプランによって異なり、ざっくり次の3パターンに分かれます。
- 個人向けプラン:設定で「学習に使う/使わない」を切り替えられることが多い
- 法人・学校向けプラン:契約上、既定で学習に使わない保護が設けられていることが多い
- 一時的な会話モード:履歴に残さず、学習にも使わない専用モードが用意されている場合がある
迷ったときの基本姿勢はシンプルです。「学習をオフにする」+「そもそも見られて困る情報は入れない」。この2つをセットで考えるのが安全です。とくに児童生徒の情報は、後者(そもそも入れない)が鉄則です。
【最重要】「学習させない設定」と「個人情報を入れてよい」は別問題
ここは多くの人が誤解するポイントなので、先にはっきりさせておきます。
学習をオフにする=AIモデルの再学習に使われにくくする設定であって、「入力した情報が外に漏れない」「何を入れても安全」という意味ではありません。
たとえば次のような点が残ります。
- サービス提供や不正利用防止のため、一定期間はデータが保持されることがある
- 過去にすでに学習へ使われたデータは、後から完全に取り消せるとは限らない
- 担当者(人間)が確認する仕組みが、サービスによっては残ることがある
つまり「学習オフ」は安全対策の一部にすぎません。次章以降の設定手順は大切ですが、「入れてよい情報かどうか」を自分で判断するのが、もっと大切な前提になります。子どもの名簿・成績・写真は、設定に関係なく入れないのが原則です。
ChatGPT(OpenAI)の学習させない設定
個人向けのChatGPT(無料版・Plus)では、会話をモデル学習に使うかどうかを設定で切り替えられます。
設定手順(学習をオフにする)
- 画面右上のプロフィール →「設定(Settings)」を開く
- 「データコントロール(Data Controls)」を選ぶ
- 「Improve the model for everyone(全員のためにモデルを改善)」をオフにする
オフにすると、新しい会話は学習に使われなくなります(即時反映)。ただし、すでに学習に使われた分が遡って取り消されるわけではない点に注意してください。
一時チャット(Temporary Chat)
履歴に残したくないときは「一時チャット」が便利です。一時チャットは学習に使われず、メモリにも残らず、一定期間後にシステムから削除されます(公式の説明では約30日)。メインの設定がオンでも、一時チャットは学習対象外です。
学校で配布されたアカウント(Team / Enterprise / Edu / API)の場合
業務・教育向けのChatGPT(Team・Enterprise・Business・Edu・API)は、既定で入力内容をモデル学習に使わないとされています。とはいえ、利用ルールは学校・教育委員会の契約・管理者設定によります(後述の「組織で使うとき」を参照)。
👉 詳しい仕様は公式で確認:OpenAI ヘルプ「Data Controls FAQ」
Gemini(Google)の学習させない設定
Geminiでは「Gemini Apps Activity(アクティビティ)」の設定で、会話の保存と学習への利用をコントロールします。
設定手順(学習をオフにする)
- ブラウザで Gemini Apps Activity(
myactivity.google.com/product/gemini)を開く - 「Keep Activity(アクティビティを保存)」をオフにする
- あわせて「自動削除」を確認(既定は18か月。最短で3か月に変更可)
オフにしても残る点(要注意)
- オフでも、サービス提供や安全確認のため72時間ほどは保持されてから削除されます
- 人間のレビュー担当者がすでに確認した会話は、別管理で最大3年ほど保持され、アクティビティを削除しても消えない場合があります(ユーザー側で消す手段は用意されていません)
学校のGoogleアカウント(Workspace)の場合
教育向けのGoogle Workspace(Workspace for Education)版は、個人向けとは別の取り扱いになり、管理者の設定が優先されます。許可なく人間レビューやAI学習に使わない保護が設けられているとされています。
👉 詳しい仕様は公式で確認:Google「Gemini Apps Privacy Hub」
Claude(Anthropic)の学習させない設定 ※2026年は前提が変わっています
Claudeは「以前はデフォルトで学習に使わない」というイメージを持つ人が多いですが、2025年8月にこの前提が変わりました。ここは特に注意してください。
現在の扱い(個人向け Free / Pro / Max)
- 2025年8月28日以降、個人向けプラン(Free・Pro・Max、Claude Codeを含む)は会話を学習に使うかどうかを利用者が選ぶ方式になりました
- 許可した場合、新規・再開した会話は最大5年保持され学習に使われ得ます。オフにした場合は従来どおり約30日の保持です
設定手順
- Claudeの設定 →「プライバシー設定(Privacy Settings)」を開く(
claude.ai/settings/data-privacy-controls) - 「model training setting(モデル学習の設定)」で、学習への利用をオフにする
法人・教育・API向けは対象外
Claude for Work・Claude for Education・Claude for Government・API利用(Amazon BedrockやGoogle CloudのVertex AI経由を含む)は、この消費者向けの学習利用の対象外とされています。
年齢条件(Claudeは18歳以上)
Claudeの個人向けサービス(claude.ai)は、利用規約上18歳以上が対象とされています。子どもが直接使うツールではないため、先生・保護者が授業準備などに使う前提で考えましょう。最新の利用条件は必ず公式規約で確認してください。
👉 詳しい仕様は公式で確認:Anthropic「Updates to our Consumer Terms」
3社かんたん比較表(2026年6月時点・公式で要確認)
| 項目 | ChatGPT | Gemini | Claude |
|---|---|---|---|
| 学習オフの設定名 | Improve the model for everyone | Keep Activity(アクティビティ) | model training setting |
| 設定の場所 | 設定>データコントロール | Gemini Apps Activity | プライバシー設定 |
| オフ時の保持の目安 | 新規会話は学習対象外 | 約72時間で削除(フィードバック未送信時) | 約30日(許可時は最大5年) |
| 履歴を残さないモード | 一時チャット(約30日で削除) | 一時チャット相当の利用 | —(設定で制御) |
| 法人・学校版の扱い | Team/Enterprise/Edu/APIは既定で非学習 | Workspaceは管理者設定が優先 | Work/Education/API等は対象外 |
設定に関係なく「入力してはいけない情報」
どんなに設定を整えても、次のような情報は入力しないのが前提です。設定のオン・オフに関わらず、そもそも預けない方が安全です。
- 児童・生徒の個人情報(名簿・成績・写真・家庭事情・通知表の所見など)
- 保護者・家庭の個人情報(氏名・住所・電話番号・連絡内容など)
- パスワード・校務システムの認証情報
- 校外秘・未公開の資料(校務文書、テスト問題、個別の指導記録など)
- マイナンバー・口座情報・健康情報など、漏れると影響が大きいもの
どうしてもこうした内容を扱いたいときは、名前を伏せる・要点だけにする・架空の例に置き換えるなど、入力前にひと工夫しましょう。子どもがAIに入力してよい情報の線引きは小学生がAIに入力してはいけない情報リストにまとめています。
学校・家庭で使うときは「組織・家庭のルールが最優先」
個人で設定を整えても、学校・教育委員会に情報管理ルールがある場合は、そのルールが最優先です。
- 教育向けプラン(ChatGPTのEdu/Enterprise、Google Workspace for Education、Claude for Educationなど)は、管理者の設定や契約で扱いが決まります
- 「個人の設定でオフにしたから大丈夫」と自己判断せず、所属校・自治体の情報セキュリティ方針・AI利用ルールを必ず確認してください
- 家庭で子どもと使う場合も、あらかじめ入れてよい情報を決めておくと安心です(保護者のための生成AI安全ガイド)
「学習支援機能」とデータの「学習設定」を混同しない
名前が似ていて紛らわしいのですが、次の2つはまったく別物です。
- 学習支援機能(ChatGPTのStudy Mode/GeminiのGuided Learningなど):答えをすぐ教えず、考えさせながら学ぶための使い方の機能
- データのモデル学習設定:あなたの会話をAIの再学習に使うかどうかのプライバシー設定
「Study Modeをオンにした=データが学習されない」ではありません。両者は独立しているので、プライバシーが気になる場合は本記事の設定を別途確認してください。学習支援機能そのものの比較は、ChatGPT「Study Mode」 vs Gemini「Guided Learning」比較でくわしく解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 一度入力した情報は、あとから消せますか?
会話履歴は各サービスの設定から削除できますが、すでに学習に使われた分や、人間がレビュー済みのデータは完全には消せない場合があります。詳細は各社公式ヘルプで確認してください。
Q. 無料版は有料版より危険ですか?
一概には言えません。学習に使うかどうかはプランより「設定」と「契約形態(個人向けか教育・法人向けか)」で決まる部分が大きいです。まずは学習オフの設定を確認しましょう。
Q. 学習をオフにすれば、児童の情報を入れても大丈夫ですか?
いいえ。学習オフと「個人情報を入れてよい」は別問題です。設定に関係なく、児童生徒の名簿・成績・写真・所見などは入力しないのが前提です。
Q. 子どもに使わせても大丈夫ですか?
サービスごとに年齢条件があります(例:Claudeの個人向けは18歳以上、ChatGPTは13歳以上・18歳未満は保護者同意)。子どもが使う場合は保護者・学校の管理のもとで、各サービスの年齢条件と安全設定を必ず確認してください。
Q. 学校のルールと個人設定、どちらを優先すべきですか?
所属する学校・教育委員会のルールが最優先です。校務データの取り扱い方針に従ってください。
まとめ:安全に使うためのチェックリスト
- ✅ 使うAIで「学習させない設定」をオンにしたか(ChatGPT/Gemini/Claude)
- ✅ 設定オフでも「入れてはいけない情報(児童生徒の情報など)」は入れていないか
- ✅ 学校で使うなら、教育委員会・所属校のルールを確認したか
- ✅ 子どもが使うなら、年齢条件と安全設定を確認したか
- ✅ 最新の仕様を公式ヘルプで確認したか
AIは正しく設定すれば、先生・保護者にとって安心して使える便利な道具です。まずは設定を整え、入れる情報を選ぶところから始めましょう。
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