通知表・所見作成を助けるAI活用例【現役教員が解説・2026年版】

教育AI

最終更新:2026年4月11日 各AIツールの機能・料金は変更される可能性があるため、最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。また、所見作成におけるAI利用可否は各自治体・学校により方針が異なります。必ず勤務校のガイドラインを確認したうえでご利用ください。

この記事の結論

  • 筆者は現役の小学校非常勤講師として、所見シーズンの大変さを毎学期痛感しています
  • 所見作成にAIを 補助的に 使うことで、文章整形・言い回しの推敲・敬体統一などの時間は確実に削減できます
  • ただし 児童の個人情報(名前・成績・家庭事情・特定可能な出来事など)をAIに入力することは絶対NG です
  • 本記事では「個人情報を一切含まない汎用プロンプト」を5つ紹介し、安全な使い方を解説します
  • AI活用の前に、必ず 勤務校・教育委員会のガイドライン を確認してください

リード:所見地獄と、AIという「第三の選択肢」

学期末。テストの丸付けが終わり、通知表の成績は確定した。残るは所見欄——。教員経験のある方なら、この時期の「所見地獄」を一度は味わったことがあるはずです。筆者自身、非常勤講師として受け持つ児童の所見を、毎学期眠気と戦いながら書いています。

所見は、子ども一人ひとりの姿を丁寧に言葉にする大切な仕事です。だからこそ、時間もエネルギーも膨大に必要です。ここに登場するのが生成AIですが、「使っていい部分」と「絶対に使ってはいけない部分」 があります。本記事では、筆者が現場で試行錯誤した結果たどり着いた 安全側に倒した使い方 を共有します。


まず結論:AIに任せていい作業/絶対に任せてはいけない作業

作業 AIに任せていい? 補足
汎用的な所見テンプレートの作成 「◯年生向けの学習面テンプレ5種類」のような依頼はOK
一般的な言い回しの言い換え・バリエーション出し 「もう少し柔らかい表現に」等
常体→敬体の統一 文体ブレのチェック
敬語・漢字の誤用チェック 最終確認は人間が必要
児童の具体的な様子(個人情報)を入力して文章化 × 絶対NG 個人情報保護・守秘義務違反のおそれ
成績データをそのままAIに貼り付けて分析 × 絶対NG 同上
所見の最終チェック 人間の目が必須。AIはあくまで補助

最重要原則:個人情報を絶対にAIに入れない

この章だけは、何度強調してもしすぎることはありません。現役教員として、ここは一切の妥協ができないポイントです。

入れてはいけない情報の例

  • 児童の実名・あだ名・イニシャル(特定可能なもの)
  • 学校名・学年・組
  • 成績・評定・テストの点数
  • 家庭事情(家族構成・保護者の職業・兄弟姉妹の話)
  • 特定の出来事(日時・場所が具体的なエピソード)
  • 健康状態・発達特性に関する情報
  • 交友関係・いじめ・トラブルの詳細

なぜNGなのか

  1. 守秘義務違反のリスク:教員には地方公務員法・教育公務員特例法などに基づく守秘義務があります。個人情報を外部サービスに送信することは、これに抵触する可能性があります。
  2. 個人情報保護法・条例:児童の個人情報は特に手厚く保護されます。学校外のクラウドサービスに無断で送信するのは原則NGです。
  3. AIサービスの学習データ利用:多くのAIサービスは、入力内容が学習データや改善に利用される可能性があります(設定で無効化できる場合もあります)。一度送信した情報は回収できません。
  4. ログ・漏洩リスク:AIサービス側のログや万一のセキュリティインシデントにより、情報が外部に流出するリスクがゼロではありません。

鉄則: 「家族や管理職の前で読み上げて平気な内容だけ」をAIに入力する。これ以上の個人的情報は、たとえ匿名化しても入れない。


安全な使い方:AIは「言い回しの辞書」として使う

筆者が実際にやっている使い方は、シンプルに言うと「汎用テンプレ生成器」「言い換えツール」としての活用です。子どもの具体的な様子はAIに渡さず、自分の頭の中と手元のメモだけで書き、最後の文面調整だけAIに手伝ってもらう 流れです。

この使い方なら、個人情報は一切AIに送信されません。

実際のワークフロー

  1. 自分のノートに、児童の様子を箇条書きでメモ(これはAIに入れない)
  2. そのメモを見ながら、自分の言葉で所見の下書きを書く(手書きでもOK)
  3. 書き上がった文章の「言い回しに自信がない部分」だけ、個人情報を全て削除した一般化した文 にしてAIに相談する
  4. AIから返ってきた言い換え候補を参考に、自分で書き直す
  5. 最終的な所見は自分の責任で完成させる

個人情報を含まない汎用プロンプト例 5選

ここからが実践編です。以下のプロンプトはすべて 児童の個人情報を一切含まない形 に設計されています。そのままコピペして使えます。

プロンプト1:学習面の所見テンプレート生成

小学校の通知表所見(学習面)で使える、汎用的な文章テンプレートを
5パターン作成してください。
条件:
- 一文の長さは60〜100字程度
- 敬体(です・ます調)ではなく、所見らしい常体
- 具体的な固有名詞は入れず「◯◯」で埋める形式
- 「頑張った」「成長が見られた」などのポジティブな方向で

プロンプト2:言い換えバリエーション出し

下記の所見文(一般的な例文)について、意味を変えずに
言い換え候補を5つ挙げてください。
例文:「授業にまじめに取り組み、ノートを丁寧にまとめることができました」
条件:
- 小学校の所見として自然な表現
- 「まじめ」「丁寧」以外の言葉で表現するバリエーションも1つ含める
- 150字以内

※ここに入力する例文は、必ず 誰のことかわからない一般化された文章 にしてください。実際の児童の様子をそのままコピペしないこと。

プロンプト3:敬体・常体の統一チェック

以下の所見文案について、常体(である調/です・ます調を使わない
所見向けの文体)に統一されているか確認し、ブレがあれば指摘して
修正案を提示してください。
(ここに自分で書いた一般化した文案を貼る。固有名詞・個人情報は
すべて「◯◯」に置き換えてから貼り付けること)

プロンプト4:ポジティブ表現への言い換え

小学校の所見で「課題があった」面について、否定的にならず前向きに
表現する言い回しを5パターン挙げてください。
条件:
- 保護者が読んで傷つかない表現
- 事実を歪めない誠実な表現
- 「今後の伸びしろ」を感じさせる方向性
- 各60字前後

プロンプト5:生活面の所見テンプレート生成

小学校の通知表所見(生活面・行動面)の汎用テンプレートを5種類
作成してください。
条件:
- 「友達との関わり」「係活動」「掃除・当番」「あいさつ」
  「時間を守る」の観点からそれぞれ1つずつ
- 固有名詞は「◯◯」に置き換え
- 80字前後
- 常体

学校・自治体のガイドラインを必ず確認する

ここまで紹介した使い方はあくまで 筆者個人の判断に基づく例 です。実際の運用では、勤務校・設置者(市町村教育委員会や自治体)のガイドラインが最優先されます。

確認すべきポイント

  1. 生成AIの業務利用が認められているか
  2. 認められている場合、どの業務まで許可されているか(所見作成が含まれるか)
  3. 使ってよいサービスが指定されているか(例:組織契約の教育版のみ可、など)
  4. 個人情報・機密情報の取り扱いに関する具体的ルール
  5. 入力内容が学習データに使われない設定(オプトアウト)の義務づけがあるか

確認先

  • 管理職(校長・教頭)
  • 情報担当・ICT担当の先生
  • 市町村教育委員会・都道府県教育委員会の通知文
  • 文部科学省「初等中等教育段階における生成AI利用に関するガイドライン」最新版

特に2025年以降、多くの自治体で方針が明文化されてきています。「みんな使ってるから大丈夫」ではなく、必ず一次情報(通知文・ガイドライン) にあたってください。


注意点:AIの誤情報・誤字チェック

AIは自信ありげに間違えます(ハルシネーション)。所見に限らず、教育文書では以下の点に特に注意が必要です。

よくある間違い

  • 慣用句・故事成語の誤用:もっともらしい言い回しが実は存在しない表現だった、ということがあります
  • 敬語の不自然さ:特に保護者向け文章では微妙に硬すぎる/くだけすぎることが
  • 漢字の誤変換:同音異義語の取り違え
  • 学年相応でない語彙:難しすぎる表現や専門用語が紛れ込むことがある

チェックのコツ

  • 最終チェックは 必ず自分の目で 行う
  • 辞書(国語辞典)で慣用句を確認する
  • 可能なら同僚教員にも見てもらう
  • 声に出して読むと不自然さに気づきやすい

よくある質問(FAQ)

Q1. 児童の様子を匿名化すれば個人情報を入れてもいいですか?
A. 筆者は推奨しません。「◯◯くん」のように名前を伏せても、学年・クラス・具体的エピソードから特定できてしまうことがあります。また、匿名化しても守秘義務の観点から問題になり得ます。「個人が特定される情報は一切入れない/そもそも個別の児童の話をAIに入力しない」 が最も安全な線引きです。

Q2. 学校でAI利用が禁止されている場合はどうすればいいですか?
A. 禁止されているなら使わないでください。これは絶対です。ルールを破って使ったことが発覚すれば、業務以前に信頼を失います。ガイドラインが未整備の学校では、管理職に「使ってもよいか」を書面で確認するのが安全です。

Q3. 校長・管理職に怒られませんか?
A. 「児童の個人情報を一切入れていないこと」「学校のルールに従っていること」「最終的な責任は自分が持つこと」を説明できれば、筋の通った使い方として理解されるケースが多いです。筆者の経験上、むしろ「どう使ってるの?」と興味を持たれることの方が多いです。ただし所属校の方針が最優先です。

Q4. ChatGPTとClaude、どちらが所見向きですか?
A. 文章の自然さ・温かみではClaudeがやや優位、汎用性・スピードではChatGPTが優位という印象です。筆者はテンプレ生成はChatGPT、言い換えや微調整はClaudeという使い分けをしています。ただしどちらも個人情報は入れません。

Q5. AIを使って所見を書くのは「手抜き」ではないですか?
A. 児童の様子を見ていないのにAIに丸投げするのは問題ですが、自分が観察した事実を自分の責任で書いたうえで、言い回しだけAIに整えてもらう のは立派な業務効率化です。削減できた時間を子どもと向き合う時間に使えるなら、それこそが本来の目的です。

Q6. 無料版のAIでも大丈夫ですか?
A. 言い換え・テンプレ生成程度であれば無料版で十分です。ただしどの版を使うにせよ、入力内容が学習データに使われない設定(オプトアウト)を確認 してから利用することをおすすめします。

Q7. AIで作ったテンプレをそのまま使っていいですか?
A. 推奨しません。テンプレはあくまで「たたき台」。そこから自分の言葉に直し、児童一人ひとりの姿を反映させてこそ所見の意味があります。AIが作った文章を一字一句そのまま使うと、逆に「どの子にも当てはまる薄い文章」になってしまいがちです。


まとめ:AIは所見の「補助輪」、魂は教員が込める

所見作成は、教員の専門性と誠実さが試される仕事です。AIはその専門性を奪うものではなく、機械的な作業を減らして、子どもと向き合う本質的な部分にエネルギーを残すための道具 です。

本記事で紹介した原則をもう一度整理します。

  1. 児童の個人情報を絶対にAIに入れない
  2. AIは「汎用テンプレ」「言い回し辞書」として使う
  3. 最終的な文章と責任は必ず教員自身が持つ
  4. 学校・自治体のガイドラインを必ず確認する
  5. AIの出力は必ず人間の目でチェックする

この5つを守れば、AIは所見シーズンの頼もしい味方になります。逆にこれを守らなければ、便利さと引き換えに大切な信頼を失いかねません。便利さに飛びつく前に、安全の線を自分で引く。これが、生成AI時代の教員に求められる姿勢だと筆者は考えています。

次の一歩: まずは勤務校・教育委員会のガイドラインを一読してください。そのうえで、本記事のプロンプト1(学習面テンプレート生成)を試してみましょう。AIとの適切な距離感が見えてきます。


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