AIにスライドを作ってもらおうとしたら、自分のイメージと全く違うものができました。途中では気づかず、結局最初からやり直しです。このことから、まず見直すべきは子どものルールではなく、自分の使い方だと感じました。現役の小学校の先生として、AIの答えを受け取ったあとに私がやっている4つのことと、AIに聞かないと決めていることを書きます。
AIにスライドを作ってもらったら、できあがりが全然違った
デザインが関わる作業をAIに頼んだときに、受け取ったものが自分のイメージと全く別物になりました。画像を作ってもらったときも、スライドを作ってもらったときもです。
このとき私が欲しかったのは、型の決まったスライドです。その「型」を言葉にしてうまく渡せていませんでした。AIは渡された言葉のとおりに、まじめに別のものを作ります。私の頭の中にある「型」は、言葉にしないかぎりAIに届きません。
問題は、できあがるまで違うと気づけなかったことです。途中で「これは違う」と言えないまま完成し、最初からやり直しになりました。
この失敗で分かったのは、AIの使い方は子どもに教える前に、大人が自分で決めておくものだということです。子どもに渡すルールは、そのあとに決まります。
子ども側の話は、AIを使うと子どもは考えなくなる?(子ども編)に分けて書きました。
「頼りすぎ」が起きるのは、なまけているからではない
AIに頼りすぎるのは、なまけているからではありません。決めるのがしんどいからです。
決めるには責任がついてきます。これで合っているのか。この言い方で相手を傷つけないか。AIに聞けば、決める作業だけは肩代わりしてもらえます。ただし、AIはその責任を背負ってくれません。
決めるのがしんどい場面ほど、AIの答えはよく見えます。
- 急いでいるとき
- 疲れているとき
- 相手の反応が怖いとき
引き受ける負担が大きいほど、預けたくなります。
私にとってこわいのは、AIが便利すぎることです。聞けば、不安がすぐ終わります。答えが欲しくて聞いているのか、安心が欲しくて聞いているのか。AIに聞く前に、そこを一度自分に確かめます。
言葉選びに迷う場面ほど、AIに預けたくなります。保護者への返信や、授業準備がそうです。答えそのものがほしいというより、自分の中の考えを整理して、相手に届く言葉に変えてもらえたことがとても便利に感じました。便利さと危うさは、背中合わせです。
気をつけようと思うだけでは続きません。忙しい日も、気の重い日もあります。だから私は、受け取ったあとにやることを手順として決めました。
AIの答えを受け取ったあと、私がやっている4つのこと
頼りすぎているかどうかは、返ってきた答えをどう扱うかで決まります。私が毎回やっているのは、次の4つです。使っているAIの種類は関係ありません。
1. 内容を読み込んで、誤りがないか確かめる
返ってきた文章を、そのままでは使いません。最後まで自分で読み込んで、内容に誤りがないかを確かめます。読み直す時間は、書き直す時間より短く済みます。スライドの件で学んだのは、ここです。
2. 個人情報が混ざっていないか確かめる
授業準備でも、返信文でも、個人が特定されないように気をつけています。名前を入れないのはもちろん、その子だとわかってしまう細かい事情も書きません。不安なことを相談するときも同じです。相談したい中身と、それが誰の話かは、別の内容です。
学校での生成AIの扱いについては、文部科学省が「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」(Ver.2.0・令和6年12月26日)を公開しています(文部科学省の公式ページ)。そのなかに、次の一文があります。
学校現場において児童生徒が生成 AI を利活用する場合、プロンプトに氏名や写真等の個人情報を入力させないよう留意する。
出典:文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」(Ver.2.0・令和6年12月26日)p.19(PDF)
これは学校向けの文書ですが、入力してよい情報の線引きは家庭でも参考になります。
3. 別のAIにも、同じことを聞く
ひとつのAIの答えだけで決めません。同じ質問を別のAIにも投げて、違う意見が出てこないかを見ます。二つが食い違ったところは、自分で考えるべき場所として扱っています。違う意見が並ぶと選ぶ手間は増えますが、その手間が自分で考える時間になります。
4. それでも、鵜呑みにしない
三つやっても、最後に決めるのは自分です。読み込んで、個人情報を外して、別のAIにも聞いた。そこまでやっても、AIの答えを自分の考えの代わりにはしません。この最後の一歩を飛ばすと、前の三つは形だけの手続きになります。
苦手な分野ほど、できあがるまで「違う」と言えない
この4つをやっても防げない場所があります。自分が苦手な分野です。
文章を書くこと、考えを整理すること、相手に合わせて伝え方を変えること。ここは私の得意分野です。だからAIの答えがずれ始めた時点で気づけます。「そこは違う」と言うための物差しを持っているからです。
デザインは苦手です。物差しがないので、途中で違和感が出ません。だからスライドが最後まで組み上がって、はじめて「これじゃない」とわかりました。確かめる力は、その分野を自分がどれだけ知っているかで決まります。
同じことを、あるエンジニアの方が書いていました。
AIの危うさが最も出るのは、知識がないために違和感そのものが立ち上がらない領域です。
出典:pdfractal「なぜ、AIは頭が良い人が使うとより頭が良くなるのに、頭が悪い人が使うとより頭が悪くなるのか?」(Zenn・2026年6月2日公開/2026年6月18日更新)
私がスライドで気づけなかったのも、これでした。
振り返ると、抜けていたのは頼む前のひと手間でした。どんな型が欲しいのかを言葉にしないまま渡せば、AIは別のものを作ります。苦手な分野を頼むときは、先に自分の基準を言葉にしてください。基準が出てこないなら、完成品を頼まずに途中を見せてもらいましょう。やり直しになる範囲が小さくなります。
あなたにも、言葉で説明できる分野とできない分野があります。失敗しやすいのは、説明できないほうをまるごと任せて、完成品だけを受け取るときです。どの分野なら自分の言葉で説明できるのか。これは自分にしか分かりません。
確かめ方そのものを子どもと共有したいときは、AIのウソを子どもに教える方法(ファクトチェックの習慣)にまとめています。
AIに聞かないと決めていること
子どもへの声かけは、AIに聞きません。
一般的な回答が欲しいときは聞きます。この場面では一般にどう言われているのか、といった問いです。その子に合わせて何をどう伝えるかを考えるときは聞きません。その子の今のリアルな様子と、これまでどう伸びてきたかを知っているのは、実際につながりのある自分だけだからです。
AIは、渡された情報の範囲でしか答えられません。その子について私のほうが多く知っているなら、返ってくる答えは自分の考えより粗くなります。私が線を引く基準は、自分とAIのどちらが多く情報を持っているかです。
家庭でも同じです。宿題の進め方の一般論なら、AIが整理して出してくれます。今日その子がどんな顔で帰ってきたかを知っているのは、そばにいる大人だけです。どちらに聞くかは、その情報を持っているのが誰かで決まります。
教室で見えた、同じAIを使っているのに開く差
子どもたちを見ていると、同じAIを使っていても、やっていることがはっきり分かれます。
考えるために使っている子は、AIの回答から元のソースを見に行きます。そこに書かれている内容について、さらに自分で調べます。その子にとって、AIの答えは出発点です。
終わらせるために使っている子は、返ってきた文章をただ書き写します。答えが終着点になっているので、そこから先へ進みません。
この差は、頭の良さの差ではありません。受け取ったあとに何をするかの差です。大人の4つと、形はまったく同じでした。だから私は、子どもに求める前に自分の使い方を見直しました。
見分け方は簡単です。答えが出たあとに、その子が何をしているかを見てください。画面を閉じたのか、別のページを開いたのか。考えるために使っているかどうかは、そこに出ます。
実際の声かけの言葉は、子どもがAIに入れてはいけない情報と、家庭で使える声かけにまとめました。使い始めの手順や家庭のルールづくりは、小学生のAIの始め方ガイドのほうが具体的です。
大人が考えていれば、子どもも自然と考えるようになる
AIに限らず、子どもは大人のことをよく見ています。大人が常に考える姿勢を持っていれば、子どもも自然と考えるようになります。
子どもに「自分で考えなさい」と言うのは簡単です。その言葉が届くのは、言っている大人が実際に考えているときだけです。
自分が考えて使っていれば、子どもが考えずに使っている場面で言えることが変わります。「そういう使い方はやめなさい」ではなく、「私はこうしている」と言えます。「私は〜」という形で伝えられるのは、自分がその使い方を実際にしている人だけです。
- 頼りすぎかどうかは、受け取ったあとに何をしたかで決まる
- 苦手な分野ほど途中で違和感が出ない。頼む前に自分の基準を言葉にする
- その子のことをいちばん知っているのは自分。個に応じた判断は、AIに預けない
今日やることは、ひとつだけです。AIに何かを聞いたら、その答えを閉じる前に「自分はどう思うか」を一度だけ言葉にしてください。それを続けているかぎり、子どもの前で借り物の言葉を使わずに済みます。
子どもに使わせるツールそのものを選び直したいときは、小学生向けAIツールの比較から見てください。
よくある質問
AIに頼りすぎるとどうなりますか?
いちばん先に減るのは、自分で決める回数です。AIは答えを出すだけでなく、決める負担も引き受けてくれます。それが続くと、答えの良し悪しを測る物差しが育ちません。ただし、AIを使えば必ずそうなると決まっているわけではありません。分かれ目は、答えを受け取ったあとに自分が何をするかです。
AIを使うと思考力が下がると聞きました。対策はありますか?
下がると断定できる根拠を、私は持っていません。そのうえで私がやっている対策は、答えを最後まで読む、個人情報を入れない、別のAIにも聞く、最後は自分で決める、の4つです。手順として決めておくと、忙しい日でも飛ばさずに済みます。
自分がAIに依存していないか、どう確かめればいいですか?
答えを受け取ったあとの自分の行動を見てください。最後まで読んでいるか。別のAIにも聞いているか。最後に自分で決めているか。この3つが抜けていたら、AIの答えをそのまま使っています。私はこれに加えて、AIに聞く前に「答えが欲しいのか、安心が欲しいのか」も確かめています。
AIに聞かないほうがいいことはありますか?
私は、その子に合わせた声かけをAIに聞きません。一般的な考え方を知りたいときは聞きます。目の前の一人に何を言うかを聞かないのは、その子を知っている自分のほうが判断材料を持っているからです。あわせて、名前や、その子だと特定できる事情も入力しません。
AIの答えが正しいか、どう確かめていますか?
まず全文を読み込んで、誤りがないかを確かめます。次に、同じ質問を別のAIにも投げます。違う意見が出ないかを見るためです。食い違ったところは、自分で考える場所として扱っています。それでも、自分の得意でない分野では見落としが出ます。
子どもがAIに丸投げしていたら、何と言えばいいですか?
私は「私はこうしている」という形で伝えます。やめなさいと言う代わりに、自分が実際にやっている確かめ方を先に見せます。そのほうが言葉が届きます。具体的な声かけの言い回しは、子どもがAIに入れてはいけない情報と、家庭で使える声かけにまとめています。
最終確認:2026年8月3日。外部リンク先の内容は、各公式サイトで最新の情報を確認してください。






