「読書感想文にAIを使ったら、先生にバレる?」。お子さんからそう聞かれて、答えに困った保護者の方に向けて書きました。
結論から言うと、AIに丸ごと書かせた感想文は、わかることが多いです。ふだんその子が使わない難しい言葉や漢字が急に出てくると、あれ、と思います。
ただ、本当に大事なのは「バレるかどうか」ではありません。その使い方で、書く力がつくかどうかです。感想そのものは自分で書き、AIは「言葉のヒント」「構成の相談」「推敲」の3つの補助に限る。この形なら、ズルにはなりません。
私は小学校の非常勤講師とオンラインスクールの講師をしていて、子どもたちの作文を読む側にいます。そこで見てきたことをもとに書きます。
※「バレない書き方」は書いていません。安全で、ズルにならない使い方だけを扱います。
AIに書かせた感想文は、なぜわかるのか
先生は一年間、その子の作文を読み続けています。だから、うまい・下手ではなく「いつもと違う」ところで気づきます。私が「これは自分で書いていないな」と思うのは、だいたい次のようなときです。
- ふだん使わない難しい言葉が急に出てくる
- ふだん書かない漢字を使っている
- 言葉づかいそのものが、いつもと変わっている
もうひとつ、AIはその本を読んでいません。だから「どの場面で、自分がどう感じたか」という具体的なところが薄くなります。文章としては整っているのに、中身がふわっとしている。そこも目につきます。
気づいたとき、私はまずこう聞きます
では、気づいたらどうするか。いきなり叱ることはしません。まずその子に「これって何か道具を使ったかな?」と聞いてみます。
使ったこと自体を責めるための質問ではありません。何をどこまでAIにやってもらったのかがわからないと、次にどう声をかければいいかが決まらないからです。言葉を1つ教えてもらっただけなのか、全部書いてもらったのかでは、話がまったく違います。
ご家庭でも同じだと思います。「AI使ったでしょ」と決めつけるより、「どこをAIに手伝ってもらったの?」と聞くほうが、そのあとの話がしやすくなります。
ズルにならない「補助3段階」
では、AIはどう使えばいいのか。感想そのものは自分で書くという前提のうえでなら、次の3つは学びを助けてくれます。オンラインの授業で子どもたちの文章を見ていても、この順番だと自分の言葉が残りやすいです。
その前にひとつだけ。低学年のうちは、お子さんに操作させるより、隣で大人が打ち込んで画面を一緒に見るほうが安心です。使うサービスの年齢の条件も、登録の前に公式サイトで確認してください。
段階1:言葉のヒントをもらう
「うれしかった」しか出てこなくて止まっているときの使い方です。お子さんに、こう聞かせてみてください。
「『うれしい』に近い言葉を、小学生が使う言い方で5つ教えて」
出てきた候補のなかから、自分の気持ちにいちばん近いものをお子さん自身に選ばせます。言葉の引き出しを増やす使い方で、文章を書いてもらうのとは違います。
段階2:構成を相談する
読書感想文で子どもからいちばん多いのは、「どうやって書けばいいのかわからない」という質問です。本は読んだし、心に残った場面もある。それなのに、どの順番で何を書けばいいかがわからなくて止まってしまう。この相談は本当によく受けます。
ここはAIが役に立つところです。「心に残った場面は決まったけど、どんな順番で書けばいい?」と相談すると、たとえばこんな型を返してくれます。
- その場面が、どんな場面だったか
- なぜ心に残ったのか
- 自分だったらどうするか
型はもらっても、中身はお子さんの言葉で埋める。それが構成の相談です。書き出しでずっと固まっているようなら、ここから入るのがいちばん早いです。
段階3:自分で書いたものを推敲してもらう
最後まで自分で書いたあとに、言葉づかいの変なところや直したほうがいい箇所を見てもらう使い方です。頼み方は、こう決めておいてください。
「この文章、書き直しはしないで、直したほうがいいところだけ教えて」
ここは、3つのなかでいちばん気をつけたいところです。ちょっと直してもらうつもりが、まるっと書き換えられてしまうことがあるからです。AIは頼まれれば全部書き直しますし、そのほうが見た目には整った文章が返ってきます。返ってきたものが元の文章と別物になっていたら、それはもうお子さんの感想文ではありません。
だから、AIが返してきた文章をそのまま貼り替えないでください。指摘だけ読んで、直すのはお子さん自身にします。書き上げた元の文章を別に残しておくと、見比べられるので安心です。
この「たたき台にして自分で推敲する」使い方は、文部科学省のガイドラインでも、活用が考えられる例として挙げられています。
生成AIの利活用方法を学ぶ目的で、自ら作った文章を生成AIに修正させたものを「たたき台」として、自分なりに何度も推敲し、より良い文章として修正した過程・結果をワープロソフトの校閲機能を使って提出する
出典:文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」(令和6年12月26日)18ページ「Box-5. 学習場面において利活用が考えられる例、不適切と考えられる例」の「(利活用が考えられる例)」より
ガイドライン本文Ver.2.0(PDF・文部科学省)
3つに共通するのは、感想と文章の中身は、必ず子どもが作るということです。より広い家庭学習での使い方は家庭学習にAIを使う具体例10選にまとめています。
これはやってはいけない使い方
逆に、次の使い方は「学びにならない・ズルになる」ラインです。
- 本の感想文を「まるごと書いて」とAIに頼み、そのまま提出する
- 読む前・感想を持つ前に、AIに「この本の感想を教えて」と聞く
- AIが出した例文を、言葉を少し変えて写す
なかでも、読む前にAIへ感想を聞いてしまう使い方は、文部科学省のガイドラインが名前を挙げて不適切としているものです。
詩や俳句の創作、音楽・美術等の表現・鑑賞など、感性や独創性を発揮させたい場面、初発の感想を求める場面等で安易に使わせる
出典:文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」(令和6年12月26日)18ページ「Box-5. 学習場面において利活用が考えられる例、不適切と考えられる例」の「(不適切と考えられる例)」より
ガイドライン本文Ver.2.0(PDF・文部科学省)
「初発の感想」というのは、読んだ直後に自分のなかに出てくる最初の気持ちのことです。読書感想文は、まさにそこから書き始めるもの。そこをAIに肩代わりさせると、宿題としての意味が残りません。
ガイドラインの中身をもう少し知りたい方は、文科省「生成AIガイドラインVer.2.0」を現役講師がやさしく解説にまとめています。
親の声かけ:「バレる?」と聞かれたら
お子さんに「AI使ったらバレる?」と聞かれたら、こう返してみてください。
- 「バレるかより、○○の気持ちが書いてあるかが大事だよ」と、目的に戻す
- 「言葉が出ないところだけ、AIにヒントをもらってみる?」と、補助の使い方を提案する
- 「どの場面が心に残った?」と、感想を引き出す質問を親からしてみる
書き上がったものを見て「これは自分で書いていないな」と思ったときも、いきなり問い詰めないほうがうまくいきます。私が学校でやっているのと同じで、「これって何か道具を使った?」と聞くところから始めてみてください。責めるためではなく、どこを手伝ってもらったのかを知るための質問です。
「間違えても大丈夫」「自分の言葉でいい」という空気があると、子どもはAIに逃げずに、自分の気持ちと向き合えます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 読書感想文にAIを使うと、本当にバレますか?
A. 丸ごと書かせた場合は、わかることが多いです。ふだん使わない難しい言葉や漢字が急に出てきたり、言葉づかいがいつもと変わっていたりすると、一年間その子の作文を読んでいる先生には気づかれます。ただし、言葉のヒントや推敲など「補助」として使い、中身を自分で書いていれば、そもそも問題になりません。
Q2. AIに書いてもらった文章を、少し直せば大丈夫ですか?
A. おすすめしません。土台がAIの文章だと、自分の感想になりません。順番が逆です。まず自分で書いて、そのあとにアドバイスをもらう形にしてください。
Q3. 先生に「AIを使った」と正直に言ってもいいですか?
A. 補助として正しく使ったなら、隠す必要はありません。「言葉のヒントだけAIに聞いた」と言えるくらいの使い方が、安心の目安です。私も、気づいたときはまず「これって何か道具を使ったかな?」と聞くところから始めます。使ったこと自体で叱るための質問ではないので、正直に話してもらえたほうが助かります。心配なら、事前に先生へ確認してもよいと思います。
Q4. コンクールに出す感想文にAIを使ってもいい?
A. 応募規約を必ず確認してください。文部科学省のガイドラインにも、次のように書かれています。
生成AIの利活用を想定していないコンクールの作品やレポート等について、生成AIの出力をそのまま自己の成果物として応募・提出することは評価基準や応募規約によっては不適切又は不正な行為に当たること、活動を通じた学びが得られず、自分のためにならないことなどについて十分に指導する
出典:文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」(令和6年12月26日)20ページ「Box-6. 課題に関する留意事項について」より
ガイドライン本文Ver.2.0(PDF・文部科学省)
迷ったら、主催者か先生に確認しましょう。
Q5. 子どもが「めんどくさいからAIに書かせたい」と言います。
A. 気持ちはわかります。でも、感想文は「上手に書く」課題ではなく「自分の心の動きに気づく」課題です。書くのが大変なときは、AIに書かせるのではなく、親が「どこが面白かった?」と質問して、言葉を引き出してあげてください。
Q6. 「どうやって書けばいいかわからない」と言われます。
A. 読書感想文でいちばん多い相談です。本は読んでいるし、心に残った場面もあるのに、並べ方がわからなくて止まっているだけ、ということがよくあります。そこはAIに「どんな順番で書けばいい?」と相談してもかまいません。型をもらって、中身をお子さんの言葉で埋めれば、ズルにはなりません。
まとめ:感想は自分で、AIは3つの補助だけ
読書感想文とAIのつき合い方は、こう整理できます。
- 丸ごと書かせれば、ふだんの言葉づかいとの違いでだいたいわかる
- 大事なのは「バレるか」ではなく「書く力がつくか」
- 感想と文章の中身は、必ず自分で書く
- AIは「言葉のヒント・構成の相談・推敲」の3つだけ
- 推敲でまるっと書き換えられていたら、そのまま使わない
「バレる?」と聞かれたら、隠す方法を教えるより、どこで困っているのかを聞いてみてください。言葉が出ないのか、順番がわからないのか。そこがわかれば、AIに何を手伝ってもらえばいいかも決まります。
次に読むなら:
- 読書感想文・自由研究の全体像は夏休みの読書感想文・自由研究にAIはアリ?へ。
- 宿題全般での使い方は家庭学習にAIを使う具体例10選へ。
- そもそも使わせて大丈夫?という方は小学生にAIを使わせる始め方と家庭ルールへ。







